は、イギリス型、ブラジル型、インド型、イスラエル型など、すべて最初の2020年の春頃に流行した、武漢G型、欧州G型より、変異して強くなっている。つまり、感染確率が上がった。
1.肺に見られる症状
エイズ発症で肺に表れる症状には、実にさまざまなものがあります。
例えば、カンジダ症です。
カンジダ症は、カンジダというヒトの粘膜や口腔内にいる常在菌(真菌)によって引き起こされる炎症です。
カンジダ症は、女性の膣で感染する性病だけの名称ではありません。
カンジダ症による肺炎は、肺へ転移し感染巣を作る症状で、免疫力の低下したエイズ患者に起こり抗生物質が効きません。
コクシジオイデス症も真菌感染症のひとつで、乾燥地帯に多い風土病の中では最も危険なもののひとつです。
吸入すると肺に炎症を起こし、感染者の0.5%が全身感染し、その半数が死亡するというペストに匹敵する病原性があります。
別名、砂漠熱や砂漠リュウマチと言えば、聞いたことがある人もいることでしょう。
ニューモシツチス肺炎は、ニューモシスチス・イロベチイと言う真菌感染によって発症する肺炎で、発見者の名を取りカリニ肺炎とも呼ばれています。
エイズのように、免疫力の低下した人に合併症として起こる肺炎で、常在菌のニューモシツチスの増殖によって血液中に酸素が取り込めなくなり、低酸素血症を起こします。
化膿性細菌感染症は、肺炎のように肺胞内に細菌感染が起こり、肺に空洞が広がります。
そして、その空洞内に白血球などの壊死した細胞(膿)が詰まってしまう症状です。
活動性結核(肺結核・肺外結核)は、結核菌を吸い込むことで感染する肺の病です。
健康な人の中では感染しても発症しないことが多いので、気づかない内に感染したり、感染させたりしているため、根絶が難しい病気です。
風邪のような初期症状が長く続きますが、昔は治らない病気の代表でした。
リンパ性間質性肺炎は、成熟したリンパ球が肺胞内に溜まる病気で、呼吸困難を起こします。
また、リンパ球が肥大したものを肺リンパ化形成と言います。
このようにHIV感染した場合、最終的な死亡原因が肺炎による事は非常に多くなっています。
また、通常健康な大人で健全な免疫を保持している場合に、1年に2回以上肺炎になることは稀です。
エイズが発症し、免疫が低下することによって反復性肺炎と言って、頻繁に肺炎を引き起こすようになるのです。
2. クリプトコッカス症
クリプトコッカス・ネオフォルマンスという真菌感染によって引き起こされる感染症です。
肺に感染すると咳や胸の痛み、呼吸困難を起こします。
髄膜に感染すると髄膜炎を起こし、頭痛や錯乱などの症状が見られます。
また、皮膚に感染すると発疹や潰瘍を起こし、膿が溜まることもあります。
その他、骨や肝臓、脾臓、腎臓、前立腺など内臓に感染することもあります。
鳥類の糞の汚染で感染することがあり、エイズ患者では死に至る可能性があります。
3. ヒストプラズマ症
ヒストプラズマ症は真菌症のひとつですが、3種類の原因菌があります。
熱帯や亜熱帯地方に多いカプスラーツム型は、米国ミシシッピ川流域での感染が多く報告されており、中にはコウモリの糞に付着していた菌を吸い込み感染した例もあります。
通常は自然治癒しますが、HIV感染者の場合は進行し、全身性となり死亡する例があります。
アフリカ大陸で報告されているのは、ズボアジ型です。
ファルシミノースム型は旧ソ連や東欧、中等やインド地方で見られ、馬やロバのリンパ節やリンパ管などが侵されますが、病原菌的にはカプスラーツム型と同じです。
コウモリやひばりの糞を好む性質があり、吸引すると肺炎を起こします。
4. イソスポラ症
近年、エイズの合併症として注目を浴びているイソスポラ症は、熱帯地域に多い原虫感染症です。
一般的には潜伏期間は1週間ほどですが、HIV感染者の場合は数日で発症します。
イソスポラは人間の腸内に住み着いて、食欲減退や吐き気、発熱、腹痛を伴う粘液性の下痢症状を起こします。
通常は自然治癒しますが、エイズ患者の場合には再発を繰り返します。
日本国内では稀ですが、発展途上国などでは生水や生野菜などから感染します。
5. 非結核性抗酸菌症
土や水中など、自然界に多く分布している菌が原因になります。
結核菌と同じ抗酸菌が原因となって起こりますが、抗酸菌は毎年新しい菌が見つかると言われるほど種類が多く、多岐にわたっています。
日本ではマック症と言われる、女性に多い喀血や血痰の出るタイプと、カンサシと呼ばれる男性に多く、肺上葉に空洞を形成するものがあります。
治療はかなり難しく、有効な薬もありません。
6. ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌
HIVに感染している、13歳以下の小児患者の場合、2年以内に以下の2つ以上の症状が見られたり、繰り返されたりした場合にエイズ発症の指標となります。
ヘモフィルス属細菌は、インフルエンザに代表する菌で、肺炎や副鼻腔炎などの多くの感染症を引き起こす菌です。
連鎖球菌は、髄膜炎や猩紅熱、リウマチ熱などの重篤な疾患を引き起こす原因菌ですが、ストレプトコッカスなど口腔内に常在している菌の中にも連鎖球菌があります。
エイズ発症の指標となる疾患は以下のとおりです。
敗血症、肺炎、髄膜炎、骨関節炎、中耳炎や皮膚粘膜以外の臓器潰瘍
7. サルモネラ菌血症
食中毒の原因としても有名なサルモネラ菌。
サルモネラ菌感染が原因となって引き起こされる炎症には、通常は発熱や嘔吐、腹痛や下痢などの食中毒症状が主です。
しかし、HIV感染者の場合は重篤になりやすく、菌血症や心内膜炎、骨髄炎、感染性動脈瘤などのリスクが高くなります。
菌血症は、本来ならば無菌の状態の血液内に、細菌が入り込む症状です。
心内膜炎は、血流内に入った細菌が心臓の弁など心膜内に感染を起こし、弁膜症や弁破壊を発症します。
骨の炎症や破壊を骨髄炎と言い、血流が多いために起こります。
また、感染性動脈瘤は動脈壁が破壊されて瘤ができ、破裂したり敗血症になったりする極めて重篤な病気です。
8. 単純ヘルペスウイルス感染症
単純ヘルペスは多くの人が持っている神経節に潜んでいるウイルスですが、抵抗力の弱まったHIV感染者にとっては脅威になります。
非常に感染力が強く、カポジ水痘様発疹症やヘルペス性髄膜炎などの原因になるのです。
9. サイトメガロウイルス感染症
ヒトサイトメガロウイルスはヘルペスウイルスの一種です。
小児の内に感染し、キャリアとなっていることの多いウイルスでもありますが、免疫不全のHIV感染者にとっては大敵です。
特に、重篤な肝炎を発症するウイルスとして知られています。