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【ウルフラムのA New Kind of Science】ウルフラム「宇宙を支配する原理は,わずか数行のプログラム・コードに過ぎない」

みなさん、こんにちは。

さて、最近私は、あのライフゲームの創始者だったジョン・コンウェイ博士が、不運にも武漢コロナウィルス肺炎で亡くなったことがきっかけで知った、ステフェン・ウルフラム博士のYouTubeインタビューにハマってしまった。



というのも、どういうわけか、ウルフラムの言いたい主張が実に自然によく理解できるからである。

ちょっと前置きとして長くなるかもしれないが、それを最初にまとめてみよう。

要するに、彼ウルフラム博士は、コンピュータの数値解析言語としてMathematicaを制作した。

これは、俗に「シンボリック計算」というもので、それまでのフォートランとかベーシックでは幾多のプログラムの行数になるものが、それをシンボリックにパッケージにして、そのパッケージの操作をシンボルを用いて行うのである。

これにより、そのMathematicaの言語を操ることによって、それまでのいわゆる「コンピュータ計算」「数値計算」「数値積分」「数値微分」。。。などがすべてできるようになった。

そうすると、このMathematicaは「1つの数学的宇宙」のようなものになる。数値解析が必要なすべての計算がこのMatheticaという数学言語の空間内の生物のようにみえるわけだ。

ところが、それを制作したウルフラムは一種の「神」になる。なぜなら、その言語の基本ルールをすべて彼自信が組み立てたからだ。

彼を「神」として「始めにルールありき」「はじめに言葉あり」の言葉のルールを基に、「数学計算」という数学宇宙は進化したのである。

この「数学解析」「数値解析」という「数値計算の世界」と、さらにそれ以前に自分で作り出した、「セル・オートマトンの世界」と非常に対応してみえた。

彼のセル・オートマトンには、2^{2^K}, K =3,の可能性しかない。つまり、256個のルールしか存在しない。しかし、その中のルール30がとてつもない未知の予測不能の振る舞いを示す。彼はこれに圧倒されたのである。

つまり、ルールがシンプルでも、その中からまったく予測不可能の現象が現れる。「創発」されるのである。イマージェンス(Emergenece)である。

Mathematicaを売るビジネスは大企業になり、その創始者として金持ちになり、裕福な数学者になったウルフラムは、悠々自適の研究生活を行い、密かに家にこもり、この思想をどこまでも突き進めた。そして10年後、一つの思想に行き着く。

それが、

A New Kind of Science
【ウルフラムのA New Kind of Science】ウルフラム「宇宙を支配する原理は,わずか数行のプログラム・コードに過ぎない」_a0386130_10313796.jpg


だった。

その後、Mathematicaは人工知能と検索を組み込み、さらにWolframAlphaに進化した。





この辺の事情は以下のものに詳しい。


 米国のコンピュータ科学者Stephen Wolframの新著「A New Kind of Science」(出版元:Wolfram Media)が,世界の科学界で論争を呼んでいる。Wolframは1970年代後半に素粒子物理学者として頭角を表わし,80年代に入るとコンピュータ科学に転向,いくつかの際立った業績を挙げて,天才と呼ばれた。

 当時の彼が残した最大の成果は,Automataと呼ばれるアルゴリズム理論にまつわるもので,これは最新の成果であるA New Kind of Scienceの出発点ともなっている。

10年を費やして新著を執筆

 Automataは元々,現代コンピュータの生みの親,Von Neumannらが考案したアイディアだが,Wolframは単なるゲーム的な色彩の強かったオリジナルのアイディアを,学術的に分類・整理して科学的方法論へと昇華させた。Automataの基本は,「極めてシンプルなアルゴリズムをコンピュータに繰り返し計算させると,異常に複雑なパターンへと発展し,これが自然界のすべての事象を説明する」という考え方にある。

 80年代にこれが話題になった時には,例えば「雪の結晶」「巻貝の模様」あるいは「相対性理論に基づく歪んだ時空間」など,自然界の様々なパターンが,確かにそうした「繰り返し計算」によって生成され,Wolframの主張を裏付けるものとされた。しかし彼の考え方は,科学界の主流からは「異端」としてしりぞけられた。

 Wolframはその後,Mathematicaというワーク・ステーション上でのCalculus(微積分を中心とする解析計算)ツールを開発し,これが商業的な成功を納めて,かなりの富を蓄えた。このお金を元手に科学計算用のソフトウエア開発会社を興し,これが軌道に乗ると事実上,経営の現場から身を引いた。

 そして90年代に入ると,Wolframは全く沈黙してしまう。悠悠自適の身になった彼は,生活の全時間を費やして思索と計算に没頭し,宇宙の原理を解明するための仕事に打ち込んだ,とされる。10年の努力の成果として出来あがったのが「A New Kind of Science」で,Wolfram本人はこれを「NewtonのPrincipiaに匹敵する科学的金字塔」と自負しているという噂もある。

宇宙を支配する原理は,わずか数行のプログラム・コードに過ぎない

 「A New Kind of Science」の考え方によれば,これまで数千年をかけて発展してきたすべての科学は,ある意味で全く見当外れの方法に頼ってきた。物理学,化学,生物学から心理学,さらには様々な社会科学まで,既存の学問的領域は本来,そのように分類されるべきではなかったというのだ。

 これらの科学領域の様々な現象は,実はその根底において同一のアルゴリズムに支配されており,これを色々なやり方で反復計算することによって,各領域の複雑な現象が生成されるという。「宇宙のすべてを支配する原理は,わずか数行のプログラム・コードに過ぎない」とWolframは見ている。

 このように「既存の学問体系を完全に破壊し,全く別の原理に従って自然界を理解する」という意味で,「A New Kind of Science」と呼んでいるのだ。

 Wolframの考え方は,コンピュータ万能の理論とも言える。物理学や数学を中心にした伝統的な科学は,方程式を基本にして演繹的に導かれるが,Automataでは単純なプログラム・コードを反復計算することによって,いわば帰納的に導かれる。

 ニュートンらが活躍した17世紀には,現在のような進んだコンピュータが存在しなかったから,当時の科学者は演繹的手法(数式計算)に頼らざるを得なかった。すなわち歴史的には必然だが,科学的には偶然である。むしろ本当に正しい科学の方法は,現在のようなコンピュータを駆使したアルゴリズム演算である,というのがWolframの主張である。

伝統的な科学界からは猛烈な反発をくらう

 彼の思想はあまりにも革新的なので,伝統的な科学界からは猛烈な反発をくらっている。「A New Kind of Science」を1ページも読んでみる前から,「馬鹿馬鹿しい」と一笑に付す物理学の大御所もいるという。

 つまりWolframを取り巻く環境は,80年代にAutomata理論を唱えた時とあまり変っていない。しかし,今回の彼は10年以上をかけて,まるでジャーナリストのように入念なインタビューをして,自然科学から社会科学まで様々な分野の専門家から意見を取り入れ,それに基づいて理論を強化した。

 1200ページを超える大著「A New Kind of Science」が,これからどんな評価を受けるかは「神のみぞ知る」だが,ご本人は「この本を完全に理解するには,一生かけて読んでほしい」と言っている。




私がなぜこのウフルラムの思想が実によく理解できるのか?


というと、実は私はユタ大時代の博士論文で「1次元準周期格子の理論」というものを研究したからである。

この理論は、0から1までの全ての数に対して、その数(一般に無理数)に対応する1次元構造を構築し、それを1つの準周期結晶構造とみなす。そうしておいて、その結晶構造の上を走る電子のシュレーディンガー方程式を解いて、電子状態を決定する。こうして、その準周期結晶格子の物性を説明する。こういう考え方の理論だった。

問題は、数論におけるあらゆる無理数が連分数展開で表現できるのだが、その連分数展開を構成する原理はほんの僅かしか存在しない。大まかに見て、2つしかないのである。この2つのルールをうまく組み合わせるだけで、0〜1までの全ての数が構築できるのである。

有限のもので、無限のものを構成する。つまり、数の宇宙もまたわずかなルールだけで構築されるのである。


この思想は私の準周期系と彼のオートマトン系とまったく同一の思想である。むしろ、私の行った無理数の分類の方がはるかにシンプルである。

ここには、「形式言語」という問題が絡む。

有限個のアルファベット(原子種に対応)と有限個の公理系(結合の仕組みの定義)により、あらゆる組み合わせの固体や高分子を構築できるのである。

そして、形式言語にはかならず「ゲーデルの不完全性定理」が絡む。つまり、どんなシステムにもその公理系では成否が答えられない命題が「無限に」存在するのである。

無理数にもかならず予測不能の無理数がある。オートマトンにもその後どのようになるか予測不可能なものがある。

どうやら、ウルフラムはこれを「Computational Irreducibility」と呼んでいる。「計算の還元不可能性」とでも訳すのだろうか?

数では、eやπなど簡単な数式では表せない数に対応する。いわゆる、「超越数」である。


もしこういうことに興味がある人は、だいぶ昔に私が書いた以下のものを見てほしい。まだ、量子計算もDNA計算も分子計算もあまり進んでいなかった時代のものである。



目次
1。はじめに

| <多様な世界> | <多様なアイデアの歴史> | <還元論と非還元論> | <部分と全体> |

2。生物の多様性
| <生物の多様な世界> | <DNA2重ラセン構造の発見> | <シュレディンガーの夢> | <本論文の目的> |

3。数の多様性
| <発散する数列> | <ユークリッドの互除法> | <無理数の登場> |

4。言語の多様性
| <アルファベット> | <言語> | <文法> | <チョムスキーの変形生成文法> | <数も言語の1つ> |

5。代数の多様性
| <代数のアルファベット> | <代数> | <自由群> | <拡大> | <オートモーフィズム> | <ニールセン変換> |
| <多項式> | <イデアル> |

6。幾何の多様性
| <リンデンマイヤーシステム> | <フラクタルと自己相似性> | <カオス> |

7。機械の多様性
| <フォンノイマンのオートマトン> | <チューリング機械> | <ゲーデルの定理> |

8。結晶の多様性
| <フィボナッチ格子> | <1つのブレイクスルー> | <スケール変換群> | <トレイスマップ> |
| <カントール集合的スペクトル> | <フラクタルな波動関数とリーマン面> | <多原子種への拡張> |

9。進化を記述する科学
| <多様性の科学> | <シュレディンガーの夢の解決:すべてを統合すること> |
| <量子オートマトン、量子チューリング機械、量子コンピュータ,DNAコンピュータ>|

10。まとめ
| <来たるべき世界像> | <新ルネッサンス> | <人類の見果てぬ夢:考える機械> | <若者たちへ> |



たぶん、この私の「シュレディンガーの夢」の思想と彼の「A Kind Of New Science」の思想は同一だと信じる。


では、なぜ私がそれから離れたか?


というと、それだけでは生命は理解不可能だと思ったからである。


あくまで、シナリオは理解できるが、シナリオはだれかにより演じられなければならない。

つまり、演技者が必要なのである。

形式言語は、記述すること=物理の言葉では運動学、にあたる。現実には、動力が必要なのだ。


事実、いくらMathematicaが優れていようが、これを動かすには電圧と電流が必要だ。

だれが、その電気を生み出すのか?

つまり、結局あらゆるプロセスにはエネルギーが必要なのである。エネルギーこそ、Mathematicaに命を吹き込む。

さもなくば、たんなる情報の羅列でしかない。


数も同じ。数を記述するのは人である。数自体が自分を自分で記述しない。


しかし、人は自分で自分を生み出す。


この違いをいかに理解するか?


この問いに目覚めたら最後、普通の科学を超えなければならない。普通の科学とは平衡系の科学である。


というわけで、この宇宙を理解する場合に、「形式的に理解する」という意味では、ウルフラムの思想は非常に意味のある意義深いものである。

その意味では、「フラクタル幾何学」に対応する。むろん、フラクタルも運動学に対応する。動力学ではない。だから、ウルフラムの思想は、ある意味で、「計算の幾何学」である。


問題は、こういうことができる背後に潜む物理原理である。


さて、だいぶ前置きが長くなったが、しかしながら、ウルフラム博士の話は非常にインテリジェンスに富んで面白い。

特に、彼の師であったリチャード・ファインマンの話が面白い。というわけで、それをメモしておこう。以下のものである。







ところで、いまの若者は恵まれている。我々の時代には、ファインマンの肉声など聞けるチャンスはなかったのだ。








やはりいい学者からいい学者が生まれる。いつの時代もそうである。


ウルフラム博士は悠々自適の生活らしい。フリーランスというのだろうか?

まあ、彼はお金を儲ける必要がない。自分がしたいことをしているだけだろう。


その意味では、相変わらずの主夫である俺に近いな。


いや〜〜、すまん。





弥栄!





【ウルフラムのA New Kind of Science】ウルフラム「宇宙を支配する原理は,わずか数行のプログラム・コードに過ぎない」_e0171614_11282166.gif






by kikidoblog3 | 2020-04-21 13:57 | 数・理・科学エッセイ

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